1992年4月30日木曜日

アンネの日記

  このイースター休み、アムステルダムを訪れた。有名なアンネの日記のアンネの家が残されているが、この日記の書かれた時代がついこの間の約50年前のことと思うと考えさせられる。このような暗黒の時代が再び来る可能性があるのではないかという心配である。

  世界は米ソ冷戦が終わり、これからは戦争の心配はなくなったと安心しているが、大きな心配事がなくなれば、また次の心配事が出てくるというのがこの世の常、個人生活でも同様である。今年は、西欧では選挙の多い年で、すでに伊、仏、英、独で実施された。これら選挙で右思想の政党が勢力を伸ばしつつある。極端な右思想に支えられた民族主義は、人類にとって最も危険であることは戦前の独、日本の歴史で経験している。

  民主主義が難しいのは、これらもともと民主主義を否定する主義に対しても自由が認められている点である。安定した社会では支持者は少数であるが、社会が混乱してくると問題となってくる。ドイツでは東西統合による経済問題、外人労働者問題、イタリアでは赤字経済問題など混乱要素は常にある。人間の理性と英知で、なんとしてもアンネの日記が再び書かれるような世界にならないよう努めなければと思う。