1992年11月27日金曜日

マイスター

  ジンデルフィンゲンにあるベンツの研究センターに何回となく出向いている。いつも思うのはベンツ車の塗装のすばらしさである。これは塗装技術に関するマイスター制度によるところが大きい。いや、ドイツ工業製品すべてに言えることであるが。
  マイスターの資格を持った、社内的にも、社会的にも、認められた職人が丹精込めて車を磨き上げるそうである。そこには、自分がその製品に重要な役割を果たしている意識を持っており、さらにはその仕事が、一種の熟練工であるピアニスト、バイオリニストと同じように社会的評価を得ているようである。ドイツの産業はまさしくこのマイスター制度に支えられており日本の構造と基本的な違いを感ずる。
  もの作りの好きな子供はマイスターの道を選ぶ。そしてマイスターになれば大学に行かなくても資格として社会的に認められる。ドイツには塾、受験戦争など皆無であるが、その理由の一つがここにあるようである。
  しかし、ベンツでは今回の不景気を理由に塗装工程の見直しをする動きがあるというが、ベンツ車の最も特徴とするところの一つであり、マイスター制度とともに維持して欲しいと思う。