1995年2月27日月曜日

グラナダ・ダカールラリー

 フィギュアスケート欧州選手権
(優勝したボナリの演技)
グラナダ・ダカールラリーのスタート

  この2月5日の日曜日、Dueseldorfから東北60kmの所にある、DortmundのWestfalenhallenで開催されたヨーロッパフィギュアスケート選手権を見に行った。フィギュアスケートの競技を見るのは初めての機会であった。なんといってもハイライトは女子のソロ。優勝は有名なフランスの黒人選手Bonalyであった。ヨーロッパ選手権であるのでスポンサーには日本の企業は入っていないであろうと思っていたが、なんとスポンサー8社の中に、富士フィルムとシチズンが含まれていた。写真を撮るたびにリンクのボードに描かれた会社のロゴマークが入る。グローバルなビジネス活動には世界的な宣伝活動も重要なようである。
  この冬休みポルトガル、南スペインをドライブした。大晦日はアルハンブラ宮殿で有名なグラナダに滞在した。ちょうど元旦の朝、グラナダの中心通りから、Granada-Dakarラリーのスタートがきられた。数分ごとに一台ずづスタートするのであるが、1mぐらいの高さの台に自動車ごとのり、そのチームの紹介をする。スペイン語と英語であるが、目立ったのは ”ミツビシ”と ”シトロエン”のアナウスであった。三菱の自動車が紹介されるたびに大きな歓声があがり、このラリーでの知名度は世界的なものであることを知った。結果は、1位シトロエン、2位、3位、4位を三菱が占めた。
  周知のごとく、三菱は早くからこのラリー(昨年まではParis-Dakarラリーであった。)に参加、この数年の自動車不況にもかからわず三菱だけが好調なのは、RV車の代名詞までなったパジェロのおかげと云われる。今やシェアーをじりじり増やし日産に迫っている。これは宣伝効果のみならず、このラリーから技術的な改良を繰り返し、それがパジェロに生かされたことも大きい。F-1に参戦したホンダと同じような考えと思う。
  その昔、RV車が売れるとはだれも予想していなかったと思う。このラリーが注目されるにつれてブームを起こした。技術的に見れば砂漠を走るニーズはなくRV車が売れるはずはないのであるが、結局は何か違う物・新しい物が欲しい消費者ニーズにあったようだ。むしろこのラリーが消費者に火を焚きつけたということである。
  もちろん、日産車もトヨタ車もスタートをきっていたが観衆の反応はほとんどなく、このラリーに関する限りは三菱が王様のような印象を受けた。ここまで来るにはこのラリーに莫大な経費と労力を費やしていると思う。その効果はすぐに計算出来るものではなく、長い年月をかけてようやく効果が見え出したもので、三菱の忍耐力には感嘆する。
  もしRVブームが来なければ、三菱のこのラリーにかけた経費と労力は無駄になると思われがちである。しかし、技術屋から見れば頑丈な車を作る技術の向上には大いに役立ち、RV以外の車にも応用出来るということで、無駄ではないと考える。この考え方がどこまで通用するかでこのたぐいの活動が企業内で認められるかどうかのポイントになるように思う。遊び心にお金を使うことも発展のためには必要な場合もある。もちろん表面的には失敗との結果になることもあるが、それは考えようで数値にあらわれないメリットが必ず残るもので、次の大きな飛躍に逆に利用出来ることが多い。少なくとも技術部門ではその蓄積が技術の財産となり、これがまさしく技術力となる。
  ドイツに来てスノータイヤを購入したとき、一番安いタイヤをつけて欲しいとタイヤショップに頼んだら、なんとMade in Japanのブリヂストンがついていた。Auto-Bahnを走るので、もちろんレーヨン使用タイヤである。レーヨンをわざわざAKZOから輸入し、タイヤを日本で作りヨーロッパに輸出している。コストは高くついている。しかし、ヨーロッパでの一般消費者の評判はピレリー以下であり、いかにブリヂストンのブランドがヨーロッパでは通用しないかを示すものである。
  日本での王者であり、しかもファイヤーストンを買収してその業界ではすでに世界的に知名度が上がっているが、一般消費者にはまだまだ浸透していない。商品の力とは、技術力とブランド力の両輪がうまくかみ合ってはじめて発揮出来るようである。
  フィギュアスケートを見てDortmundから家に戻りテレビを見ていたら、トーレパンパシフィックオープンテニスで伊達公子が優勝したと報じていた。テレビを通じてたくさんのヨーロッパの人々が”トーレ”という名前を聞いたことと思う。東レのグローバリゼイション戦略の中で、このパンパシフィックテニス大会がどう位置づけられているのかたいへん興味のあるところである。