フィンランド南西部のTurkuでは、昨年冬場-30℃、夏場+30℃を経験したと言う。なんと一年の気温の差60℃。冬場は池ではスケートができ、わかさぎ釣りも楽しめる。今年はそれほど寒くないとはいいながら、最も寒い日で-20℃であったと言う。3月も終わりに近いけれどまだ所々雪が残り、気温は-5℃ぐらい、今回仕事で訪れてこの冬久しぶりに寒さを感じた。この1月にはノールウエーのベルゲン研究所も訪問したが案外寒さは厳しくなかったのを思い浮かべると、海流の影響を受けるところとそうではないところとの差ではないかと感じた。
フィンランドは地理的にスウェーデンとロシアに挟まれ、むしろエストニア、ラトビアなど旧ソ連の国の方が近くに感じられる。歴史的にもスウェーデン、ロシアの支配下におかれ、ロシア革命後に最終的にソ連から独立した。よく知られた話として、この独立運動の際、フィンランドの人々を勇気づけるために作曲されたのがシベリウスの交響詩フィンランディアである。
しかし、その後一部領土がソ連にとられたことから、ナチスドイツのソ連への侵攻に乗じて領土の回復をねらった。しかし失敗し、このため戦後ソ連に対する多額の補償を余儀なくされた。戦後、林業が主であった産業を工業中心の産業に転換をはかることに成功しこの苦境を乗り越えた。結果、北欧の福祉国家の一つとして豊かな生活の国となった。など今回はじめて知るところとなった。
しかし、森林以外天然資源はなく、結局はソ連との貿易が大きなウエイトを占めざるを得なく、極端にいえばソ連とのつながりの中で繁栄をしてきた。政治的にも社会民主党を中心とした左派連立政権が続いていた。ソ連の崩壊と同時に初めて保守連立政権に移行したが、旧ソ連との貿易がとまり、その影響で不況のどん底の状況となり、失業率は年々増加、現在18%に達していると言う。このためか、この3月の総選挙では保守連立政権は勢力を落とし、再び社会民主党がトップとなり、社会民主党指導による連立政権に向けて動いている。
EUの仲間入りをはたしたにもかからわず経済状況は厳しく、今後の課題は、工業の立て直しである。そのためには天然資源の確保、西欧との貿易の拡大が重要で、エネルギー源としては原子力発電の検討もなされているという。それぞれの国にはそれぞれの地理的、歴史的背景があり、他の国の方法が必ずしも適切とは限らず、フィンランドもこらから独自の方策を模索していくものと思う。
フィンランドには、首都Helsinki、Tampere、Turkuの3大都市がトライアングルの地理的関係で位置しており、それぞれに工業が発達している。それを支えるようにそれぞれの都市に大学が存在している。今回Turkuの企業とTampere工科大学を訪問したが、共同で研究開発を進めているという。このような大学と企業が共同して新しい領域を開発する姿勢はすでに確立されており、戦後の急速な工業化を支えたのはこの連携作業ではないかと容易に察することが出来た。これからも、この体制の強化と、厳しい自然環境の中でも耐え抜く忍耐力で難局を切り開いて行くのではないかと思う。
帰りの飛行機の上から見ると湖はほとんど氷でおおわれ春はまだ遠いとの印象を受けたが、同時に経済の春ももうしばらくは来ないのかも知れない。
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