1993年9月30日木曜日

ベートーヴェンの第九

天皇皇后デュッセルドルフ来訪(日本週間・市庁舎にて)
  学生生活から離れて約20年、その後何回か合唱団への参加をトライしてきたがなかなか時間がとれず、長い間合唱の楽しみから遠のいていた。しかし久しぶりに合唱の感激をこのドイツで経験した。
  この9月、デュッセルドルッフは10年ぶりの日本週間。天皇皇后の来訪、歌舞伎、能、盆踊りなど純日本的な催しの他に、日独合同のベートーヴェン第9交響曲合唱の演奏が行われ、私も合唱団の一員として参加した。合唱団はデュッセルドルフに住む日本人の有志のみならず、日本からも自費で多数参加、ドイツ人も含めて総勢約500人の大合唱団であった。
  オーケストラはランプレヒト指揮フィルハーモニアフンガリア、ソリストとしてソプラノ、アルトは日本人、テノール、バリトンはドイツ人のプロが出演、会場は満席であった。
  私はバスパートであるが、この第九、バスでも高音のFの音がある。学生時代には出にくかった音であるがなぜかこの音が気持ち良く出る。オーケストラを背景に全員合唱の中でのこの音の響きは体中に響きわたりこのうえない歓喜(Freude)であった。もちろんそこにハモルという現象がさらにその歓喜を助長させる。ドイツ語は必ずしも正しく発音しているとは限らないがドイツ語でドイツ人と一緒に歌うことに特に感激した。ドイツの文化、いやいまや世界の文化かも知れないが、日本人とドイツ人が共同で演じる、このようなチャンスはこれからあるかどうか。Alle Menschen werden Brueder.(ひとみな兄弟となる)。まさしく歌が表現しようとしているそのものの体験であった。終わったあとドイツ人との握手は言葉なしに気持ちが完全に通じ合うものであり、ベートーヴェンの芸術家としての偉大さを体で感じた。
  私の持論ですが、演奏家は決して芸術家ではなく、ただのテクニシャン、音楽の世界で創造主といえるのはやはり作曲家であり、音楽の世界では作曲家が唯一の芸術家と再度認識した。
  それにしても、高音Fの音が気持ちよく出たのはなぜだろうと考える。学生の時と比べてどうも体重と体の鍛え方が違うようである。学生時代は50kgの体重、運動はほとんどしていなかった。30才台後半から水泳、ジョギング、自転車をやり始め、現在体重は67kg。ドイツへ来て出張が多く時間がとれないので運動量は減っているがそれでも時間があれば水泳など続けている。一般にプロのバリトン歌手が大きな体をしていることも今回理解出来た。

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